怨嗟。なんだかおどろおどろしいイメージが頭に浮かび上がります。何せ「怨」すなわち「うらみ」ですから。
できることなら負の思いなど抱かずに生きていきたいものですが、人間は感情で動く生き物ですので、押し殺すのもなかなか難しいものです。
今回の記事「怨嗟」でその意味や使い方を詳しく知り、数ある負の感情のうちのひとつを明確にし、心の中の暗い霧をなくしてしまいましょう。
怨嗟の意味・読み方
「怨嗟」は「えんさ」と読みます。
「怨」は、「怨霊」「怨念」などのように「おん」と読むケースも多々ありますが、「怨嗟」については「おんさ」との読みも可とする見解はありませんので、注意が必要です。
意味は「うらみ嘆くこと」です。
「怨」という漢字は、読んで字のごとく「うらみ」「うらむ」という意味があります。また「嗟」には、「嘆く」、また「舌打ちする音」という意味があります。
「怨」は、「月」そして「ひざまずく人」の象形(くつろぎ伏す、身を曲げるとの意味)と、「心臓」の象形とでできた会意兼象形文字です。
「夘」部分で曲がることを意味することから、「心が曲がる」すなわち、うらむという意味を持つ「怨」が生まれたといわれています。
「嗟」は、「口」と「差」とでできた形声文字で、意味は上記のとおり「嘆く、舌打ちする」です。
「怨」と「嗟」とを組み合わせると、まさに「舌打ちするほどにうらみ、嘆く様子」であることがわかりますね。
怨嗟の使い方
大辞林 第三版によれば、怨嗟(えんさ)は名詞であり、また「〜する」を足すことにより動詞としても使える旨の記載があります。
実際のところ、名詞として「怨嗟のこもった〇〇」「怨嗟の的」のように用いられるという点は辞書にあるとおりですが、「〜する」を足して動詞として「怨嗟する」という使い方は、あまりされませんので覚えておくとよいでしょう。
怨嗟の類義語・同義語
怨嗟(えんさ)には、実に数多くの類義語があります。
このような言葉に多くの類義語が存在するのは、あまり喜ばしい事実ではないかもしれませんが、それだけ人の心は複雑であることを表しているともいえるでしょう。
ともあれ、「怨嗟」の類義語を見てみましょう。
- 悲憤(ひふん)→ 悲しみいきどおること
- 悲憤慷慨(ひふんこうがい)→世情や自分の運命などについて、憤慨し、嘆き悲しむこと
- 憤激(ふんげき)→ はげしくいきどおること ひどく怒ること
- 憤慨(ふんがい)→ ひどく腹を立てること
- 怨恨(えんこん)→ うらむこと 深いうらみの心
- 遺恨(いこん)→ 忘れがたい深いうらみ
- 忿怒(ふんぬ/ふんど)→ひどく怒ること
- 激憤(げきふん)→はげしくいきどおること
- 憤懣・忿懣(ふんまん)→怒りが発散できずいらいらすること 腹が立ってどうにもがまんできない気持ち
以上、いずれも名詞ですので、使い方もほぼ「怨嗟」と同じです。
あとは、それぞれの言葉の微妙なニュアンスを判断のうえで、使い分けるようにしましょう。
また、上述のとおり「怨嗟する」という使い方はあまりしませんので、動詞として表す場合には「憤る」などとするのが適切といえます。
4.「怨嗟」の対義語・反対語
怨嗟(えんさ)は、「うらみ嘆くこと」という意味ですので、対を成す感情は「ありがたく感じること」となります。
この感情に該当する言葉には、以下があります。
- 感謝(かんしゃ)→ ありがたく思って礼を言うこと
- 謝恩(しゃおん)→ 受けた恩をありがたく思うこと
- 奉謝(ほうしゃ)→ 感謝を込めて礼を言うこと
反対語辞典によれば、「怨嗟」の直接的な反対語は「感謝」です。
「謝恩」「奉謝」は、「感謝」の類義語として挙げられる言葉ですので、参考程度に覚えてよくとよいでしょう。
怨嗟を使った例文
「怨嗟」を使った例文を挙げてみます。これまでの解説をふまえ、みなさんも考えてみてくださいね。
- 今国会で成立した法案は、国民の怨嗟を生むものであった
- 社長の強引な手法に、社員の怨嗟の声は高まりを見せた
- 出世頭の彼は、同期社員の怨嗟の的となった
- 彼女の怨嗟に満ちた声を耳にし、身も凍る思いで通り過ぎた
- ここで正論を述べれば、彼らの怨嗟の対象となることを避けられないであろう
「怨嗟」の持つ意味ゆえ、怖い例文ばかり並んでいることがわかりますね。
怨嗟の意味まとめ
みなさんは、今回の怨嗟(えんさ)に関する記事、どのような思いでご覧になりましたか?
インターネットの普及により、誰でも気軽に発言する機会を得られるようになった反面、意図せず発した悪意のない言葉、書き込んだ文章により、知らず知らずのうちに怨嗟の対象となってしまうことも十分にあり得ます。
怨嗟に満ちた言葉は、見聞きする人を暗澹たる気持ちにさせます。
自分も、そして自分以外の人も、不快にすることのないよう感謝に満ちた言葉を発していきたいものです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。