「剣呑」という文字、目にしたことがあると思いますが、読めますか?
「剣呑な雰囲気」のように使われますが、それは一体どういう雰囲気なんでしょう。
「剣呑なムード」になっている時に、私達はどうすればいいのでしょう。
この言葉の読み方と意味が分からない事には、全く対策の立てようがありませんよね!!
この記事では、「剣呑」の意味と読み方、使い方、類義語・同義語、対義語・反対語、そして「剣呑」を使った例文をご紹介します。
「剣呑」の意味
「剣呑」は、「けんのん」と読みます。
「呑」の文字の旧字体を使って「剣吞(けんのん)」と表記される場合もあります。
一見同じ字に見えますが、「呑」「吞」と並べてみると一画目の角度が違うのが分かりますね。
「剣呑(けんのん)」は形容動詞で、
意味は【危ない様子、不安な様子】です。
冒頭の「剣呑な雰囲気(けんのんなふんいき)」とは、【今にも争いが起こりそうな不穏な雰囲気】という事になります。
もともと「剣難(けんなん)」だったのが変化し、
当て字で「剣呑」になったと言われていますが
剣難とは、「刃物(剣)で殺傷される災難」と違う意味になってしまいます。
「剣」の代わりに「危険」の「険」の字を使って、
「険呑(けんのん)」や「険難(けんなん)」と書き表される事があるのですが、
こちらの危険の険を使った「険難」の意味は
道などが非常にけわしく、通過するのに困難なこと
苦しみ悩むこと
です。
ですから少しややこしくなりますが、
「険難」の当て字で「剣難」を使うようになったが、上記のように別の意味を持つようになり、その「剣難」の当て字の「剣呑」は、元々の「険難」と似た意味を持つ
という事のようです。
「剣呑」の使い方
「剣呑(けんのん)」という言葉は夏目漱石の作品によく出てきますが、
現代では主に口語表現で使われます。
【危なかったり、不安になったりするから、敬遠した方がいい】
という時に用いる表現です。
「剣呑、剣呑」と言うように、
重ねて使うことでその意味が強調されます。
物騒だから、あまり近づきたくない時に
「剣呑、剣呑」と言って回避するように使います。
ですから、危険な事を分かった上で近づく場合には、この表現は使えません。
「あぁ、危ない、危ない。
(自分は巻き込まれないように)気をつけよう!」
といった意味合いで使われます。
要は「くわばら、くわばら!」みたいな感じで発音すればいい訳です。
ちなみに「剣難性(けんのんしょう)」
という言葉がありますが、
これは【物事をむやみに不安に感じる性質】という意味です。
つまり【臆病者】もしくは【極度の心配性】という事ですね。
「剣呑」の類義語・同義語
「剣呑(けんのん)」の類語は、
「危険」「物騒」や
形容詞の「危ない」「ヤバイ」などが挙げられます。
「ヤバイ」は話し言葉ですが、場を考えて使ったほうがいい言葉ですね。
その他の類義表現としては、
【その場の空気】という意味合いを強くすると、
「不穏」「険悪」や、形容詞の「危うい」「きな臭い」
【その空気が自分に与える影響】を考えると、
動詞「剣呑がる」の類語になってしまいますが
「危惧する」「案ずる」「心騒ぐ」「恐れる」「怖気づく」「不安になる」
などが使用できるでしょう。
この「けんのみ」は【剣突(けんつく)の類義語】でもあります。
「剣突」は「剣突を食う」「剣突を食らわす」のように使われる言葉ですが、
これの意味は【荒々しく叱りつける事。とげとげしい言い方をする事。また、その言葉。】と
「剣呑(けんのん)」とは意味が変わってきてしまいます。
そのため「剣突」は、「剣呑(けんのん)」ではなく「剣呑(けんのみ)」と読む時の類語と考えてください。
「けんのん」と「けんのみ」
同じ漢字でも読み方がちがうと、意味まで変わってくるのですね。
「剣呑」の対義語・反対語
「剣呑(けんのん)」に対する表現を、
先ほどの類義表現のように見てみましょう。
まず「危険」「危ない」の反対語は、
安全(な)、安寧、安泰、安心などですね。
「物騒」に対義語はないので、
そのまま否定表現にして「物騒ではない」
「ヤバイ」に関しては、持つ意味の範囲が広いので、
ここであえて反対語を探す必要はないでしょう。
【その場の空気】という意味での「剣呑」の反対語は、
「不穏」➔「平穏」
「険悪」➔「柔和」「良好」「静穏」
【その場の空気が自分に与える影響】で考えると、
「危惧」➔「安堵」
「案ずる」➔「安んずる(やすんずる)」
「心騒ぐ」➔「心静まる」
となりますが、これを「剣呑」に対する表現として使うのにはニュアンスが変わる恐れもあるので少し注意が必要です。
なお、「怖れる」や「怖気づく」の対義語は
この場合「剣呑」の対義語にはならないので割愛します。
「剣呑」を使った例文
最後に「剣呑(けんのん)」を使った文例をいくつかご紹介します。
ぜひ参考にしてください。
- 銃を手にした男たちが、私達が乗った車を剣呑な目つきで見ている。
- 「そこの組事務所で殴り込みがあったみたいだよ!」「剣呑、剣呑!!」
- 「最近となりの家族が剣呑だ」と母が言うので、顔を出さないようにしている。
- 遅れて会議室に入ると、そこには既に剣呑な空気が漂っていた。
- 近頃A村とB村の関係が、剣呑な事になっている。
- 試合に負けた後の部室は、剣呑な雰囲気に包まれていた。
- 昔と違い剣呑な状況になっていると聞いたので、国境超えは今回あきらめた。
まとめ
以上、本記事では「剣呑」という言葉についてご紹介しました。
「剣呑」という言葉を使う機会はあまりありませんが、
夏目漱石を始め多くの古典小説に出てくる言葉なので、知っておくと便利です。
今後はあなたが「ヤバイ空気」を感じた時に
「剣呑、剣呑!!」と言ってみるのも面白いかもしれません。
この記事を読んで、あなたが「剣呑」の意味を正しく理解し、今後その知識を役立ててくれたらとても嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。