「矜持(きょうじ)」という言葉をよく見かけることがあると思います。
見たことはあるがよくは知らない、文脈からなんとなく意味はつかめるけれど、いざ詳しく説明しようとすると、はたと困ってしまう。
「矜持」は、そんな位置づけの言葉ではないでしょうか。
この記事では、「矜持」の読み方と意味、正しい使い方、語源、「矜持」を使った例文を紹介します。
「矜持(きょうじ)」の読み方と意味
読み方
「矜持」は「きょうじ」と読みます。
「きんじ」という読み方もありますが、こちらは慣用読みで、本来の正しい読み方ではありません。
しかし現在では、一般に通用しているので「きんじ」と読んでも間違いではありません。
どうせ覚えるなら、正しい読み方である「きょうじ」で覚えましょう。
意味
「矜持」の意味は「自分の能力を信じてそれに誇りを持つ」という意味です。
似たような意味の言葉として「自尊心」「気位」「プライド」「誇り」「自負」などがあります。
類義語の中でも「矜持」を使うと、非常に格調高い感じになります。
「矜持(きょうじ)」の正しい使い方
「矜持」は、かなり語感が硬い熟語で、主に文章中で使われます。
文章中で使う場合でも、くだけた軽い調子の文章のなかに突然「矜持」が出てくると違和感がありますので、その場合は他の類義語を選んだほうがよいでしょう。
文章を格調高くしたいときにこそ「矜持」の出番です。
「プライド」を「矜持」に置き換えれば、ぐっと高尚な、重厚な雰囲気が出てきます。
会話の中で使うなら、「プライド」や「誇り」「気位」などの、聞いてすぐに意味がつかみやすい言葉を選んだほうがよいでしょう。
「矜持(きょうじ)」の語源
「矜持」は「矜恃」とも書きます。読み方は同じ「きょうじ」です。
現在では、どちらも同じ意味で使用されます。
辞書の見出しでは「矜持(恃)」と記されています。しかし、漢和辞典を繙くと、本来、「矜持」と「矜恃」は別の意味を持つ言葉だったことが分かります。
「矜」の字には「誇り」の他にも「つつしみ」など複数の意味があります。そして「矜持」は「つつしみを持つこと」と説明されています。
一方「矜恃」の「恃」には「たよりにする」「自負する」という意味があり、「矜恃」は同じ意味の漢字を二つ重ねた熟語だったことが分かります。
現在では、「矜持」を「誇りを持つ」という意味で使って正解で、何の問題もありません。
逆に、「矜持」は本当は別の意味があって実は誤用なんだよ、などと言うと、学があると思われるより、知ったかぶりの嫌味な人間と思われるかも知れませんので、注意しましょう。
「矜持(きょうじ)」を使った例文
それでは、以下で、「矜持」を使った例文をいくつかご紹介します。
- 先週の原稿も締切ギリギリだったのに、また今週も締切に間に合わないなんて、あなたには漫画家としての矜持というものはないのですか。
- 杜撰な手抜き工事が常態化しているこの会社は、プロとしての矜持を捨てて、目先の利益ばかり追っているのであろう。
- 空腹で死にそうだった彼は、ふと、道に美味しそうな魚が落ちているのを見つけて、思わず拾って食べそうになったが、人間としての最低限の矜持が、そんな拾い食いを許さなかった。
- 通常版、初回版、限定版などすべてコンプリートするのは当然のことで、それぞれを観賞用、保存用、布教用と、三枚ずつ購入するのが、アイドルヲタクとしての矜持というものだ。
- 風俗店で初体験を済ませるのは、男としての矜持が傷つけられるような気がして、なんとなく足が向かず、彼は未だ童貞を捨てられずにいた。
- 良家の子女としての無駄な矜持が邪魔をするせいか、赤ちょうちんや、立ち食いそば屋に入ることがどうしてもできなかった。
- 食材の良し悪しを見極め、不味い食材、鮮度の悪い食材は一切使わないというのが、一流の料理人としての矜持というものだ。
- どんなに原稿の遅い作家からも絶対に締切前に原稿を頂戴し、印刷所には決して迷惑をかけない。それが彼女の編集者としての矜持であった。
まとめ
以上、「矜持」という言葉について、ご紹介しました。
「矜持」は漢字も難しいし、読み方も難しい言葉なので、使う場面を選ぶ言葉でもあります。
だからこそ、高尚な文章をいざ書こうという場面では、「矜持」を語彙のストックから出して使えれば、かなり格調高いニュアンスが演出できると思います。
この記事が、あなたが「矜持」という言葉を使いこなす役に立てたなら、こんな嬉しいことはありません。最後までお読みいただき、ありがとうございました。