「おもむろに」という言葉は、よく耳にする表現ですし、なんとなく雰囲気で使っていることも多そうですが、ちょっと待ってください。
もしかすると、「おもむろに」の意味を、勘違いしたまま使ってはいませんか?
そこで、以下では、間違いのない使いこなしを目指して、「おもむろに」の意味や用法について深掘りしていきましょう!
「おもむろに」の意味
ふだん、なにげなく口にしている「おもむろに」ですが、厳密にいうと、どういうことを表わす言葉なのでしょうか。
「おもむろに」を漢字で書くことはあまりないと思いますが、漢字がないわけではありません。
漢字で書くと、「徐に」となります。
「徐」という漢字の意味は、「ゆっくり行く」「しずか」「おだやか」「おそい」などです。
ここで、アレ? と思った人はいませんか?
つまり、「徐に(おもむろに)」は、文字通りには「ゆっくりと」という意味です。
ニュアンスとしては「ゆっくりと、重々しく」という感覚があります。
「おもむろに」の使い方
では、実際「おもむろに」は、どのように使うのでしょうか。
「おもむろに」は、行動(動作)や、その動作が始まるまでの間が、ゆっくりとしていて、重々しい感じ、を表します。
- 長老はおもむろに口を開いた。
- 汽車はおもむろに動き出した。
などと使います。
「おもむろに」の誤用に注意
「ゆっくりと」という意味の「おもむろに」ですが、
ところが近年、これを「突然に」「急に」という意味で捉え、使用する若者が増えているそうです。
これは、誤用ですので、注意しましょう。
「おもむろに」の類義語・同義語
「おもむろに」の類義語・同義語にはどのようなものがあるでしょうか。
以下に、例をあげてみましょう。
- 「徐々に」
- 「ゆっくりと」
- 「のろのろと」
- 「のそのそ」
- 「ぐずぐず」
- 「じわじわ」
- 「じりじり」
- 「じわり」「じんわり」
- 「じわりじわり」
- 「緩緩(ゆるゆる)」
- 「やおら」
など、様々あります。
特に「じわじわ」系の擬態語が多いですが、似ていても微妙にニュアンス、用法が違いますね。
類語の中で「おもむろに」の特徴は、「遅さ」の他に「重さ」のニュアンスが含まれることでしょう。
「おもむろに」の古い形は「おもぶる」と言われており、「重い」との関連があるようです。
「おもむろに」の対義語・反対語
「おもむろに」の対義語・反対語にはどのようなものがあるでしょうか。
以下に、例をあげてみましょう。
- 「急に」
- 「いそいで」
- 「あわてて」
- 「すみやかに」
- 「矢庭(やにわ)に」
- 「素早く」
- 「とんとん」
- 「着々と」
などなど、様々あります。
「おもむろに」を「急に」の意味で誤用する例が増えているのと同じように、「やおら」も「急に」として誤用している場合が多いかも知れませんが、「やおら」も「おもむろに」と同じ意味です。
「おもむろに」を使った例文
「おもむろに」はどのように使うのでしょうか。
以下に例文を挙げてみました。
- ピアニストは、長い沈黙の後、おもむろに一音目を弾き始めた。
- ずっと黙秘を続けてきた容疑者は、諦めたように、おもむろに自供をはじめた。
- 豪華客船は、港に入り、やがて、おもむろに埠頭に接岸した。
- 重い病で寝たきりだった祖父は、孫娘に背中を支えられて、おもむろに上体を起こした。
まとめ
以上、「おもむろに」の意味や用法について深掘りしてみました。
「おもむろに」や「やおら」を、「急に」「素早く」の意味で使う人はかなりの率にのぼっていますが、今のところは誤用には違いありません。正しい意味を覚えて使いましょう!
「おもむろに」を正しく活用して、表現の幅を広げていただければと思います。
この記事が少しでもあなたのお役に立てば嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。