テレビなどで、「新規事業のために急遽人を集めたが、烏合の衆でしかなかった」というような言い回しを聞いたことがありますよね。
もしくは、ゲームや映画の戦いのシーンで「敵は大勢だが、烏合の衆だ」のようなセリフを耳にした事があるのではないでしょうか。
よく聞く表現なのですが、私達は果たして正しく意味を理解しているのでしょうか。
この記事では、「烏合の衆」の意味と由来、使い方、類義語・同義語、対義語・反対語、「烏合の衆」を使った例文をご紹介します。
「烏合の衆」の意味・由来
「烏合の衆」は、「うごうのしゅう」と読みます。漢字で「烏合之衆」と表記される場合もあります。
意味は、「規律や統制に欠けた、ただの寄せ集めの群衆や軍勢」です。
「役立たずの人間の集まり」や「無秩序な寄せ集め集団」のことを「烏合の衆」と呼ぶわけです。
あまりいい意味には聞こえませんね。
この「烏合の衆」の「烏」ですが、よく見ると「とり」ではなく「カラス」の漢字ですね。
そして「合」は「集まる」で、「衆」は「多くの人」を意味します。
ですから3つを合わせると、「まるでカラスが集まったような多くの人」となります。
では、どうしてこの「カラスの集団」が「役立たずな人間の集まり」という意味を持つようになったのかを見てみましょう。
「烏合の衆」の由来
「烏合の衆」は、中国の故事から生まれた言葉です。
「後漢書・耿弇伝(ごかんじょ・こうえんでん)」に出てくる逸話によると、
後漢の初代皇帝の劉秀(りゅうしゅう)が王莽(おうもう)と戦うとき、敵の兵の人数が多いため王莽を倒せるか心配になった。すると部下が「王莽は烏合の衆を集めただけだから、この戦は勝てますよ」と言って励ました。
そこから統率のない群衆や軍勢をあざけて、烏合の衆と呼ぶようになりました。
なぜ部下がその比喩表現を使ったかと言うと、昔の人は「カラスは単独行動する鳥。集まっても好き勝手に行動するだけで、統率できない」と思っていたからです。
今ではカラスは、【とても知能が高く、仲間との情報交換にも優れ、組織的な動きもできる】ことが知られているので、こんな比喩は思いつかないですよね。
「烏合の衆」の使い方
「烏合の衆」という表現は「たくさんの人の集まり」に対して使います。ですから、たとえその語源がカラスであっても、人間以外に使うことはまずありません。
更に、この「たくさんの人の集まり」は【何かのために集まった、もしくは集められた人たち】なので、何かしら共通の相手(目的)をもっています。
ですから先程の「群衆」や「軍勢」という言葉からも想像できるように、戦いやデモなどの抗議のシーン等でよく耳にする訳ですね。
しかし【統率が取れていないので一体感もなく、目的達成の戦力にはならない】わけです。
この表現は【寄り集まって騒ぐだけの集団を蔑んでいる】意味を含むので、使い方には注意が必要です。少なくとも「君たちは烏合之衆だね」というように、相手の眼前で使うと、相手を不快にさせてしまいます。
「烏合の衆」の類義語・同義語
「烏合の衆」の類義語・同義語を知るためには、まず「烏合の衆」に含まれた要素を見てみましょう。
大きく考えて、「人の群れ」「無秩序」「まとまりがない」「取るに足りない」「戦力にならない」の意味がありますね。
「烏合の衆」には、似たような意味を持つ慣用句や諺がいくつかありますが、どの言葉を類義語として使うかは、上の要素を含む度合いの強弱で決めれば良いでしょう。
たとえば四字熟語で見ると、
- 「有象無象(うぞうむぞう)」 取るに足りない平凡な人の群れ
- 「野次馬連(やじばれん)」 無秩序な人の群れ
- 「獣衆鳥散(じゅうしゅうちょうさん)」 規律や統率が全く無いものが集まったもの
などが挙げられます。
その他の類似表現としては、「取るに足りない集まっただけの雑多な連中」という意味の強い「雑魚の集まり」や「小物の集まり」というものがあります。
こちらの言い方の方が「烏合の衆」より、「あざけている様子」が直接的に響きますね。「雑輩」を使うと、集団より単体を指すことが多いので注意してください。
「弱い者の集まり」ということだけが言いたい時は、「混成チーム」や「寄り合い所帯」などの言葉を使うこともできます。
「烏合の衆」の対義語・反対語
「烏合の衆」の反対は「規律や統制のとれた群衆や軍勢」と言えますが、それを一言で言い表す対義語はありません。
あえて挙げるなら、対義語に近い表現は「統制が取れている軍勢」を表す四字熟語の「少数精鋭」や「精鋭部隊」でしょうか。
- 「少数精鋭(しょうすうせいえい)」 少数だが規律が取れた、優能な軍勢
- 「精鋭部隊(せいえいぶたい)」 優秀な人材だけを集めた統制が取れた部隊
ただ、「烏合の衆」は「軍勢」だけではなく「群衆」にも使う言葉なので「軍勢」だけを指す上記の2つは、厳密に言えば「烏合の衆」の対義語には当たりません。
もしくは、この言葉の「集団」という部分も含めた反対語を探すと、「一騎当千」や「一匹狼」などが出てくると思います。
- 「一騎当千(いっきとうせん)」 一人で百人力の有能な兵士
- 「一匹狼(いっぴきおおかみ)」 群れずに単独で行動する人
しかし、この2つは当然「統制が取れている」という意味はもちません。「一匹狼」に関しては「有能さ」も含まれず、「孤立している」というどちらかと言うとネガティブな意味が強い言葉です。
「烏合の衆」を使った例文
最後に「烏合の衆」を使った文例をいくつかご紹介しますので、参考にしてください。
「烏合の衆」を使った例文
- 司令官を失った部隊は、すでに烏合の衆と化していた。
- いくら人数を集めても、実践経験がなければ、ただの烏合の衆に過ぎないだろう。
- いっけん烏合の衆のように見えたチームだったが、いざ試合が始まると、そうでは無かった事を相手チームに思い知らせた。
- 館の外には無数の村人が押し寄せていたが、領主は「しょせん烏合之衆だ。」と全く相手にしなかった。
- 急遽集められたメンバーはやはり烏合の衆でしかなく、まるで役に立たなかった。
- 敵軍は烏合の衆だが、我々は少数精鋭だ。恐るに足りない。
まとめ
以上、本記事では「烏合の衆」という言葉についてご紹介しました。
この記事を読んで、あなたが「烏合の衆」の意味を理解し、今後この言葉を使いこなしてくださるのなら嬉しいです。
ただ、「烏合の衆」はいい意味の言葉ではありませんから、できれば自分も含め周囲に「烏合の衆」がいない生活を送りたいものですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。